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作曲家の川崎絵都夫さんに聞きました。「第20回定期演奏会」までの長い道のり。
 

「新潟市ジュニア邦楽合奏団 第20回定期演奏会」に先立ち、
委嘱全7作品を作曲いただいた作曲家の川崎絵都夫氏にお話を伺いました。

聞き手:中尾 友彰(りゅーとぴあ音楽企画課)


 

邦楽器だけのジュニア合奏団が、日本に存在したことに驚いた

−今から12年前の今頃、「ジュニアのための邦楽合奏曲が世になく、メンバーが困っている。ぜひ当団のための作品を作曲して欲しい」と依頼しました。

川崎:当時、新潟市ジュニア邦楽合奏団(以下:ジュニア邦楽)では、私の作品である「祭り幻想」を数少ないレパートリーの一つにしていました。その作品をメンバーが気に入り、それで依頼に来たと伺い、作曲家冥利に尽きるなと思いました。同時に邦楽器だけのジュニア合奏団が日本に存在したことにも驚きましたね。当時「邦楽教育を推進する会」(現在は解散)という活動があり、私もそこへ関わっていたのですが、将来的に子どもたちによる邦楽器の演奏活動を全国に広められたら!と夢を語っていた最中、すでに新潟にはそれがあった。「凄いことをしている街だな」と感じました。

  

 


 

 

曲のレパートリーが増えれば、飛躍的に巧くなると確信

−早速、3月に行われた第8回発表会(第10回から定期演奏会に名称変更)を視察いただいたわけですが。

川崎:りゅーとぴあの能楽堂での演奏会でしたね。すでに練習・本番会場といったハード面と先生方の指導力は素晴らしいものがありましたが、合奏団としての演奏レヴェルはまだまだ発展途上でした。ただ尺八の音程に関しては、子どもが吹いているにも関わらずとても良かったことを覚えています。また合奏団を牽引していく財団側の事務局体制や現状の課題認識、さらには将来の目標がしっかりしていたので、今後曲のレパートリーが増えれば飛躍的に巧くなるのではないか、またその手助けが自分にできるかもしれないことに大きな期待を抱きました。それよりなにより、ジュニア邦楽のメンバーたちの雰囲気が素晴らしかった。新潟の子どもたちが真剣に和楽器を弾いている姿に感動と喜びを覚えました。

  

 


 

   

子どもの技量に合わせた作曲を、明確にオーダされたのが良かった。

−2004年春に上級合奏曲の「越後の子ども唄」が最初に完成し、約1年かけて練習を積み、2005年3月の第10回定期演奏会でお披露目しました。

川崎:今と比べればはるかにテンポが遅く、リズムも甘い演奏でした。でも子どもたちは本当に一生懸命弾いてくれて、当時としては間違いなく最高レヴェルの演奏でした。曲の完成後、1年間私も足げく新潟へ通い指導しましたので、そのことは誰よりも分かりました。
 

−その後、初級合奏曲「子どもの四季」、中級合奏曲「砂山ファンタジー」を1年に1曲ずつ委嘱し、毎年定期演奏会で初演しました。

川崎:先生方と事務局とで事前によくご相談いただき、初級や中級にはどんな曲がふさわしいのか、また最終的に上級曲の「越後の子ども唄」が弾けるようになるために、それぞれのクラス・技量に合わせてどのような奏法を取り入れればいいのかなど、明確なオーダーシートをいただきました。だから作曲しやすかったですね。小学生を中心としたメンバーによる(初心者向け)合奏曲は書いたことがありませんでしたが、このシートのおかげで混乱なく作曲できました。今後、ジュニア邦楽合奏団の立ち上げと新曲委嘱を検討する所が出たときに、よき手本になるのではないでしょうか。

 

 

 
 

合唱団の子どもたちと一緒に演奏することの相乗効果

−また新潟市にはジュニア合唱団もあるため、2008年には「邦楽合奏+合唱」のための作品を委嘱しました。

川崎:2007年3月のスプリング・コンサートに伺い、そこで合唱団の演奏を聴くことができました。そのときの歌声がもう大変素晴らしくて、「この合唱団に歌ってもらえるならば!」と大いに刺激を受けました。また私自身、邦楽合奏と合唱のための作品は相性が良いことを知っていたものの、これまで1曲しか書くチャンスがなかった。だから何としても良い曲を書きたいという想いで気合いが入りましたね。重ねてジュニア邦楽の子どもたちにとっても、歌と一緒に演奏することの相乗効果は大きかった。現にこの後から邦楽器で旋律を歌えるようになり、より演奏に説得力や魅力が増したと思います。

  

 


 

 

ますます深まる信頼関係。座付作曲家のように、そばにいた

−この4曲で委嘱終了の予定が、メンバーから「もっといろんな曲を演奏したい!」という声が高まり、2009年にはさらに初級・中級・上級合奏用作品を各1曲ずつ委嘱することになりました。

川崎:もうこの頃には座付作曲家のようでしたね(笑)。先生方・事務局・作曲家相互の信頼関係もかなり深まり、連携がうまくいっていました。ただ今回は、初級用の作曲に苦労しました。邦楽器を始めて間もない子どもたちにあまり音数を増やすわけにいきませんし、特殊技法も簡単なものしか取り入れることができない。それでいてここで飽きてしまえば合奏団を辞めてしまう可能性があるわけで、いかに旋律や和音だけで面白い作品に仕上げるか、そこに苦心しました。

 

 


 

初のオリジナル曲が遂に完成。子どもたちは「カゼピカ」と呼んだ。

−中級曲「南からの風」は、「沖縄音階を用いた作品はどうか?」と先生からの逆提案でした。

川崎:信頼関係が深まっていたので、私から提案してみました。いろいろな日本の曲を弾いて欲しいという想いと、通常の「ドレミファソラシド」の音階を用いた作品ばかりでは飽きてしまうのではないかと。この頃には中級合奏メンバーがかなり巧くなっていたので、初級曲とは逆にあれこれとアイディアを詰め込み、筆が進みましたね。
 

−上級曲「風と光と大地のうた」は、20分の大曲、多楽章形式の完全オリジナル作品として委嘱しました。

川崎:これまではアレンジ作品、もしくはメドレー作品としての委嘱でしたので、初のオリジナル作の委嘱は燃えました。それだけに仕上げるのにも時間がかかってしまい、完成が6月になってしまい…。でも翌月の7月末には初演をしてしまったわけで、これには本当に感心しました。またこの曲を子どもたちが勝手に「風光(カゼピカ)」と略し、愛着を持って演奏してくれていることが格別に嬉しいです。

 

 


提供:公益財団法人新潟観光コンベンション協会  

 

新潟の街を歩きまわって、新潟のエッセンスを曲に注入

−「カゼピカ」の作曲にあたり、新潟市内全域を2日間に渡りご案内しました。どこが印象に残っていますか?

川崎:古町ですね。街並みが印象的です。また当時の三味線の先生が古町芸妓さんに教えておられる方で、古町の歴史など様々なお話を伺えたことが刺激になりました。この粋な「花街文化」は2楽章に取り入れています。またもう一つは、新潟市歴史博物館。そこで見た「渟足(ぬたり)の柵」や「蜑(あま)の手振り」は、第1楽章に取り入れました。実は裏話をしますと、博物館で見た「ロシアとの交流」も取り入れたかった。しかしロシア民謡は邦楽器とは合わないことと、急にロシア音楽が入るとどうしても浮いてしまうので、最終的には思い留まりました。このように新潟市を中心としながらも、大きなテーマで作曲しようと考えていました。

 

 


提供: 公益財団法人新潟観光コンベンション協会 

 

設立から20年。プロの作品を演奏できるほどの成長に感激。

−現在ではこの委嘱7曲で力をつけたことにより、上級合奏のメンバーはプロの邦楽合奏団の作品も演奏できるほどに成長しました。

川崎:感無量です。設立から20年、そのうちの12年もの長きに渡り関わらせてもらい、喜びでいっぱいです。12年前に先生方と事務局の方々が言っておられた「将来的には日本音楽集団(プロ邦楽合奏団)の作品を演奏できるようになりたい!」という夢が実現したわけですからね。できればこの感動を全国へと広めて、他の街にも同編成のジュニア邦楽合奏団が設立されるといいですね。

 

 


 

 

精一杯演奏してほしい。それが作曲家の最高の喜び。

−それでは定期演奏会に挑むメンバーへ、一言お願いします。

川崎:進級試験やオーディションを経て、メンバーそれぞれが想いを持って本番に臨んでいることと思います。自分の力を思い切り出して、後悔のないよう、精一杯演奏してください。結果がどうであれ、それこそが作曲家としての一番の喜びです。
 

−最後にお客様へのメッセージをお願いします。

川崎:20年間の積み重ねで子どもたちがここまで出来るという晴れ姿を、ぜひ応援してください。そしてどうか子どもたちへ盛大な拍手をお贈りください!

→ 『新潟市ジュニア邦楽合奏団 第20回定期演奏会 』 詳細はこちら

 

2015年6月30日 東京・川崎絵都夫氏のオフィスにて

 

                       

 
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