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削ぎ落した美しさ ~アルヴォ・ペルトの音楽とNoismの舞踊の共通項~

いよいよ今週末!満を持しての新潟公演/Noism0+Noism1『マレビトの歌』

みなさまは、アルヴォ・ペルトというエストニア出身の作曲家をご存知でしょうか? 1935年生まれですので、御年90歳を迎えます。2014年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した際など、日本にもたびたび来日しています。演出振付家の金森穣はNoism代表作の一つである『Fratres』シリーズをはじめ、ペルトの作品をよく用いています。

私がペルトの曲に初めて出会ったのは、ヴァイオリンの演奏会で聞いた「Spiegel im Spiegel (鏡の中の鏡)」。ゆったりしたテンポの中、深淵かつ静謐、暗闇の中で一筋の光を見つけたような美しい音楽を聴いて、ペルトの深い精神性に触れた気がしたのを覚えています。12月に新潟・埼玉で公演する『マレビトの歌』は、終曲にこの曲を使っているほか、全曲ペルトの作品を使用しています。『マレビトの歌』自体に『FratresⅠ』が内包されていますので、「Fratres for strings and percussion」も使用されています。

さて、この『マレビトの歌』、もともとは2年前「黒部シアター2023春」の企画で背景に緑の丘が広がる野外劇場で上演された『セレネ、あるいはマレビトの歌』を劇場用に改訂したものになります。黄昏時に開演する野外劇場での初演は、時が進むにつれ闇が深くなり、終末、天を見上げる彼らの視線の先には、月(セレネ)と星空が広がっている(予定でしたが、残念ながら私が観た日の空は雲に覆われていました…)。また、陽が暮れていくに従って野外の気温は下がっていくので、Noismメンバーの身体からは蒸気した汗が白く立ち昇っていました。それは彼らが生きている証であるかのようで、自分も彼らと同じ空間、時間を生きているのだという実感とともに、胸に迫ってきました。

削ぎ落した美しさ ~アルヴォ・ペルトの音楽とNoismの舞踊の共通項~の画像

「黒部シアター2023春」で上演した『セレネ、あるいはマレビトの歌』   写真:黒部舞台芸術鑑賞会実行委員会

その後、今年の8月には演劇の聖地・富山県利賀村での「SCOTサマー・シーズン2025」、10月にはスロベニアとイタリアで国境をまたいで開催される「Visavì Gorizia Dance Festival(ヴィザヴィ・ゴリツィア・ダンス・フェスティバル)」の2つの国際的フェスティバルに招聘されて上演。スロベニアの公演は現地の新聞でも「音楽とダンスが溶け合い、強い説得力と深い感情を伴う舞台作品」と高く評価されました。

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『マレビトの歌』を上演したスロべニア国立劇場(SNG Nova Gorica)の外観

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スロベニアでは美しいステンドグラスを持つLarge Hallの客席が満席になりました。

りゅーとぴあでは週末の公演に向けて、劇場でさらに作品を練り上げているところです。そして、新潟・埼玉公演では、これまで山田勇気が踊っていたパートを金森穣が自ら踊ります。「久々にガッツリ踊る」と語る金森穣と井関佐和子の至高のデュオにもご注目ください。

削ぎ落した美しさ ~アルヴォ・ペルトの音楽とNoismの舞踊の共通項~の画像

劇場でのリハーサル  写真:遠藤龍

アルヴォ・ペルトの曲を使った、金森穣作品が私は大好きです。それはペルトの深い精神性と穣さんの禅に通ずるような精神性に共通のものを感じるからかもしれません。それは「祈り」とも「求道」とも「哲学」とも言えるのだと思います。
『マレビトの歌』は、どんなストーリーなのかとか、何を表現しているのかとか、頭で考えるよりも、ただひたすら音楽と舞踊に身を委ねてみてください。削ぎ落された音楽、削ぎ落された身体、削ぎ落された動き。そこに立ち現れる美しさを味わっていただければと思います。

 

▼公演情報
12月5日(金)19:00開演 6日(土)17:00開演 7日(日)15:00開演
りゅーとぴあ 劇場
12月20日(土)15:00開演 21日(日)15:00開演
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

▼公演の詳細はこちら
https://noism.jp/noism0-1_marebito/

▼チケット購入はこちら
https://piagettii.s2.e-get.jp/ryutopia/pt/ 

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