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ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~

9月下旬から10月初めにかけて、遅い夏休みでバスク地方を旅してきました。バスク“地方”と呼ばれながら、ピレネー山脈を挟んでフランスとスペイン、2つの国に分かれている非常に特殊な地域です。(政治や国の駆け引きに翻弄された結果でしょうが…それは置いといて)

ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~の画像

フランス・バスク地方、スペインとの国境に程近い小さな港町シブール。たくさんの小舟が並ぶ岸壁沿いに、モーリス・ラヴェルの生まれた石造りの家が「ラヴェルの家 La Maison de Maurice Ravel」として残っています。

 

ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~の画像

「ラヴェルの家 La Maison de Maurice Ravel」

ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~の画像

外壁に”モーリス・ラヴェルが生まれた家”と刻まれている

現在1階は観光案内所になっており、上階は入ることができません。外壁に“モーリス・ラヴェルが生まれた家”と記されているのみで、観光客らしき人もほとんど足を止めることなく通り過ぎていきます。穏やかな秋の日差しと潮風を受けながら、目立たずひっそり佇んでいる…という風情ですが、家の前のその名も「モーリス・ラヴェル通り」は結構車の往来が激しく、なかなかじっくり感慨に浸らせてはもらえません。

ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~の画像

「モーリス・ラヴェル通り」と書かれたプレート

橋を渡ってすぐ対岸の街サン・ジャン・ド・リュズを訪れたついでに(こちらはとても賑わっていました)、隣のシブールにも足を延ばしたという訳です。ちょうど11月の「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」で歌劇『子どもと魔法』が演奏されるではありませんか。
これはぜひともラヴェル先生にご挨拶&ご報告に行かねば!と、新潟から公演チラシを持参して、おうちの前で記念撮影。

ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~の画像

遠い新潟の地での公演成功を祈願してきました。
すぐ脇のカフェの外でくつろいでいた人達からは、一体何をやっているんだ??と思われたかも知れません(汗)
あわよくば、観光案内所にこっそり?チラシを残してこようかとも思ったのですが、午前11時頃だったにもかかわらず閉まっていました…!
(もしかして週末とか限定営業なのかも?)
観光地というより住宅地。一歩通りに入ると、人通りも少なく静かな時間が流れていました。

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モーリス・ラヴェル通りに並ぶ家々

長年パリで暮らしながらも、生涯バスクの血を誇りとしていたラヴェル。度々里帰りもしており、生家近くの岸壁に粋なポーズで腰かけて撮った写真も残っています。当時とは若干風景が変わっているので、ここかな?あっちかな?と当たりをつけながら周辺を歩き回ってきました。
ラヴェルも通ったであろう近所のサン・ヴァンサン教会は、小さいながらもバスク様式という3層の木製のバルコニーが美しく見応えがあります。

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ラヴェルが洗礼を受けたサン・ヴァンサン教会

ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~の画像

ちょうどオルガンのメンテナンス中だったのか「プーーーーー」とパイプ音が鳴り響く中、やはりじっくり感慨に浸らせてはもらえないのでした。

ラヴェルの故郷シブール訪問記~「東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会」歌劇『子どもと魔法』に寄せて~の画像

海辺の街らしく、シーフードレストランや魚市場などがあり、記念のお土産にはラヴェルの家の並びにあるおしゃれな食料品屋さんで魚の缶詰を買いました。ちなみに日本でも流行ったバスクチーズケーキの故郷はスペイン・バスク。フランス側ではまったく見かけませんでした。スペインとは簡単に行き来できる距離、また母親がスペイン系ということもあって、ラヴェルにとってスペインはとても身近な存在だったのでしょう。スペインをテーマにした作品が多いのも頷けます。

さて、「ラヴェルがオペラ?」と意外なイメージかも知れませんが、ラヴェル自身はオペラを書きたくて仕方なかったようで、未完の作品やアイディアのスケッチなどいくつも残されているといいます。その中でわずかに完成させた2作品のうちの1つ『子どもと魔法』は、ラヴェルにとって本当にやりたかったことを詰め込んだ、おもちゃ箱のような、宝箱のような、大好きな作品だったのに違いありません。人生に大きな影響を与えたという、母への強い想いを感じ取ることもできます。特にラストはオペラ史上、ある意味衝撃的な、屈指の名シーンではないかと思います。まさにラヴェルの真髄とも言うべき作品。新潟で演奏される貴重な機会をどうぞお見逃しなく!

★公演詳細はこちらから
東京交響楽団 第144回新潟定期演奏会
2025年11月16日(日)17:00開演(16:15開場)
りゅーとぴあコンサートホール

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