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Special interview 中村ノブアキ「田中角栄と実在した政治家たちの壮大な“会議エンターテインメント”」

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中村ノブアキ NAKAMURA Nobuaki

1967年、福岡県出身。千葉県で育つ。横浜国立大学在学中に演劇活動を開始。2001年にシアターカンパニー「JACROW(ジャクロウ)」を単独で旗揚げし、脚本、演出を担当。現在も大学卒業後に新卒入社した広告代理店のマーケティングプランナーとして働きながら演劇活動を継続している。2015年『ざくろのような』で鶴屋南北戯曲賞ノミネート、テアトロ新人戯曲賞受賞。「闇の将軍」シリーズ第3弾の脚本・演出で2020年、紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。外部作品への脚本提供や演出も数多い。日本劇作家協会/日本演出者協会会員。

田中角栄と実在した政治家たちの壮大な“会議エンターテインメント”

取材・文/本間千英子

——田中角栄と昭和の政治家たちの政争劇。登場人物は全て実在の政治家、しかも実名で演じられます。

中村[以下N]:2014年ごろ、角栄さんの伝記をいくつか読んだことから生まれた作品です。それまで全く関心のなかった角栄さんの人間力に魅了されましたし、彼が関わった政治闘争のエピソードが非常に面白かったので脚本にし、16年、第1話『夕闇、山を越える』を初演。たくさんの方に見ていただき「続編が見たい」という声が多かったのでシリーズにしました。

——俳優さんたちは、演じる政治家の特徴を見事にとらえていますね。

N:俳優たちも最初は政治家をどう演じればいいのか暗中模索していました。初演の稽古序盤、俳優たちに「政治家じゃなく小劇場の役者にしか見えないぞ!自分たちで考えろ!」と怒って僕だけ帰ったことがあるんです(笑)。翌日の稽古では全員、見違えるほど良くなっていて、以降はスムーズに本番までいけました。後で聞いたら、僕が去った後でミーティングをしたそうです。そこで彼らの中の「政治家はこう演じるべき」というリミッターが外れ、本来の力を発揮できるようになったのかもしれません。このシリーズは俳優たちの魅力をたっぷりと味わえます。

——シリーズそれぞれの見どころは。

N:第1話はいわゆる「料亭政治」を覗き見する感覚。料亭という密室での政治家の振る舞いや言葉遣い、芸妓や女将の所作などにこだわり、リアリティーを追究しています。第2話『宵闇、街に登る』は何と言っても、角栄さんがずっと支えてきた佐藤栄作=栄ちゃんが自分を後継者に指名しない腹づもりと悟り、田中軍団を結成して総理大臣になる後半ですね。栄ちゃんに啖呵を切る角栄さんにスカッとしますよ。第3話『常闇、世を照らす』は、特に娘の眞紀子さんにご注目ください。角栄さんの愛人たちをすさまじい勢いで罵倒し続けるシーンがパワフル。女の闘いも描いています。

——今回の再演で演出は変えられますか?

N:2020年の上演はりゅーとぴあでは能楽堂、東京でもL字型の2面舞台でしたが、今回は劇場ですから正面を意識した新演出と美術にします。全く新しい作品になるでしょう。前回ご覧になった方も新鮮な気持ちで見ていただけるように仕上げていきます。

——今後、作りたい作品は。

N:僕の舞台は基本的に「会議と会話」で成り立つ「会議エンターテインメント」。大学卒業後からこれまで、会社勤めをしながら演劇活動をしています。会社でのまとまらない会議や、その中での駆け引きなどが骨身にしみているからこそ、臨場感のある「話し合い」を演出できるのかもしれません。今は「企業もの」と「政治家もの」の2本柱で展開していますが、今後は劇団立ち上げ時から10年以上続けていた「事件もの」をもう一度やってみるのもいいかと考えています。

——新潟のお客さまへのメッセージをお願いします。

N:新潟を訪れるたびに、熱意ある演劇人の皆さんと触れ合えることを楽しみにしています。芸術文化発信拠点として四半世紀にわたり機能しているりゅーとぴあの劇場で再演する、新潟に根差した政治家・田中角栄の大河ドラマですので、ぜひ足を運んでいただきたい。終演後、一言でも感想をいただければうれしいですね。

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