このページの本文へ移動

杉原邦生をひもとく(後編)―10/30(土)上演 南沢奈央×濱田龍臣 KUNIO10「更地」演出家インタビュー

杉原邦生をひもとく(後編)―10/30(土)上演 南沢奈央×濱田龍臣 KUNIO10「更地」演出家インタビューの画像

10月30日(土)にりゅーとぴあ・劇場で上演する南沢奈央×濱田龍臣 KUNIO10「更地」。演出・美術をつとめる杉原邦生さんへのインタビュー後編です。(前編は こちら から)
『更地』の注目ポイントだけでなく、杉原さんが創作する上で大切にしていることや、意識していることを余すところなく教えていただきました。

※インタビュー中のみマスクを外しています。

演出を考えながら空間作りをするのは、理にかなっている

―演出家でもあり美術家でもいらっしゃいます。やりがいや大変さがありましたら、教えてください。

まず、演出を考える時に重要なのは、やっぱり“空間”だと思うんですよね。

空間がなければ、言葉も、俳優も、光も存在できない。つまり、「すべてが存在するための場」として空間を考えることは、演劇にとって最優先だと僕は思うんです。だから、演出を考えながら同時に空間づくりをするというのは、理にかなっていると思いますし、僕の創作においてはとても重要なことです。作業が多くなるという大変さはありますが(笑)。

ただ、自分だけで美術を組み立て続けていると、良し悪しではなく、パターンができてしまうので、そのことを常に意識しつつ、結果として同じパターンになっていく時も、その作品に必然性があるかどうかをしっかり見極めるようにしています。

あとは最近、意識的に自分以外の舞台美術家と一緒に仕事をすることでたくさん刺激をもらっています。他の美術家の方とお仕事ができるのは、演出家の特権ですよね(笑)。とても勉強になります。

 

杉原邦生をひもとく(後編)―10/30(土)上演 南沢奈央×濱田龍臣 KUNIO10「更地」演出家インタビューの画像

太田省吾の演出を踏襲し、新たな『更地』へ

―今作において、演出と美術で注目してほしいポイントはありますか?

太田省吾さんの『更地』では印象的なシーンがあって、男の「なにもかも、なくしてみるんだよ。」というセリフをきっかけに、二人が舞台に大きな真っ白い幕を広げて覆いかぶせるんです。

その演出を踏襲しながら新しい『更地』になるように、僕なりの解釈で構築した演出・美術プランになっているので、太田さんの上演を知っている方もその違いを楽しんでいただけると思います。また、シンプルなんですけど、空間にダイナミックな変化が加わっていくので、物語と重なりながら空間が動いていく様子にもぜひ注目してほしいです。それを観て、感じるものも人によってきっと違うと思います。

 

―杉原さんが考える“空間”はどのようなものでしょう。

空間には、劇空間(舞台上の空間)、劇場空間、その周りの環境空間、さらに社会空間、広げていくと宇宙空間…とかになっていくんですが、その大きな世界という空間の中に僕たちは小さな劇空間をつくっているんだ、という意識を常に持っているんです。つまり、観客が目の前にしている劇空間の変化や動きが、その周りの空間や、観客それぞれの意識の中にある空間にも変化をもたらせていくというか、そういう伸縮性と可能性を持っているのが演劇の空間だと思うんです。

また、例えば『更地』でも登場人物同士の関係性だけでなく、人間と環境、人間と社会、人間と地球、宇宙との関係性…そういう視点の伸縮性とダイナミズムを僕は太田さんの作品から感じ取っているので、その点も含めて、空間で表現できたらいいなと思って創作しています。

 

杉原邦生をひもとく(後編)―10/30(土)上演 南沢奈央×濱田龍臣 KUNIO10「更地」演出家インタビューの画像

固定概念に囚われてほしくないという願い

―新潟でワークショップを行いますが、組み立てる上で意識していることはありますか?

ワークを始める前にまず「僕のやり方はあくまでひとつの方法であって絶対ではない」とお伝えするようにしています。センスや感覚は教えられるものではないし、僕のワークショップでの経験が固定概念になってほしくないんです。

僕は大学入学早々、太田省吾さんに出会って演劇に対する固定概念をぐっちゃぐちゃにされて…。そこからなんでも受け入れられるようになったんです。能もオペラもコンテンポラリーダンスも面白い!舞台って、芸術って、面白い!そうシンプルに思えたから、全部吸収できた。だから、僕のワークが参加者の固定概念をぐっちゃぐちゃにするまではいかなくても、一周かき回すくらいのことになっていると良いなと思っています。

僕は自分のやり方を押し付けることも、僕のコピーをつくることもしたくない。むしろ、僕のやり方を否定して違う新しい面白い方法論を見つけていってほしいと思っているので、ワークショップをやらせていただくときはそこを特に気を付けています。

 

―久々のりゅーとぴあはいかがですか?

6年ぶりなんですよ。木ノ下歌舞伎『黒塚』(2015年) でも良い公演をさせていただきましたし、アフタートークを含めてお客さんにすごく楽しんでいただけた印象があったので、本当に楽しみにしています!

あと、今回のワークショップの夜コースの参加者には僕の作品を観たことのある人が一人もいなくて、「やった!」って思いました(笑)。素直に作品を作品として受け止めてもらえる場は本当に貴重だと思いますから。

2014年に、文化庁新進芸術家海外研修制度〈短期〉研修員としてフランスに3週間滞在した際、現地でいくつか舞台作品を観たのですが、その時、自分自身が作品と1対1で向き合っていると強く感じたんです。日本にいる時には特別意識していなかったんですけど、演出家の杉原邦生として観てしまっていて、どこか純粋に作品に向かい合えていなかったんですね。その反面、フランスでは知り合いもいないし、言葉もわからないしで、一人の観客として客席に座って、作品と向き合っている感覚がしっかりあって「本来観客ってこうものだよな」って改めて気付いたんです。この感覚を作り手側が忘れちゃいけないって思いました。だから、僕の作品を観たことのないお客さんはそういう感覚で観てくれるんじゃないか、と思うと、ワクワクするし嬉しいんです。

 

―最後に新潟のお客さまへメッセージをお願いします!

「夫婦」という最小単位のコミュニケーションの話ではありますが、物語が進んでいくにつれて、社会や世界の姿も浮かび上がってきて「この先の未来をどうやって構築していくのか」ということを考えずにはいられない、いまの時代に上演すべき壮大な作品だと思っています。

僕の作品を観たことのない方も、太田さんの作品を観たことのない方も多いかと思いますが、ぜひ固定概念を取っ払って、楽しんで観ていただけたら嬉しいです。劇場で皆さまのお越しをお待ちしております!

杉原邦生をひもとく(後編)―10/30(土)上演 南沢奈央×濱田龍臣 KUNIO10「更地」演出家インタビューの画像

南沢奈央×濱田龍臣 KUNIO10『更地』

開催日時:2021年10月30日(土)15:00 (開場 14:30)
※この公演は国および新潟県、新潟市のガイドラインに基づき、客席制限は行わずに開催いたします。
会場:劇場
チケット:全席指定 5,800円
     U25 2,500円
※公演時25歳以下の方を対象(未就学児を除く)
※ご入場時に年齢がわかるものをご提示ください

関連する公演記事

ページの先頭へ